
半導体用グリップリングとは?構造・用途・選び方を解説
半導体用グリップリングは、ダイシング後のテープを拡張し、チップ間隔を広げた状態で保持するためのリングです。
代表的な製品は、インナーリングとアウターリングを組み合わせる二重構造です。エキスパンダーで広げたテープを両リングの間に挟み込み、後工程まで拡張状態を維持します。
メーカーや工程によっては、「ウェーハ拡張リング」「エキスパンドリング」「ダブルリング」などと呼ばれることもあります。ただし、名称が似ていても、寸法や嵌合構造が共通とは限りません。
YJステンレスでは、6・8・12インチの半導体ウェーハ拡張リングと、4・5インチ共用、6・7インチ共用、12インチ対応のグリップリング搬送ケースを取り扱っています。
この記事では、グリップリングの役割、基本構造、ダイシングフレームとの違い、選定時の確認ポイントを解説します。
グリップリングを簡単に説明すると
グリップリングは、ダイシング後に広げたテープを二重リングで固定し、チップ間隔を保つための部材です。
選定時は、ウェーハサイズだけでなく、リングの外径・内径・厚み、使用するダイシングテープ、エキスパンダーや後工程装置との適合性を確認します。
グリップリングとは
グリップリングは、ダイシング後のウェーハテープを拡張し、チップ間隔を確保した状態で固定する部材です。
テープを拡張すると、隣接するチップの間隔が広がり、ピックアップや検査などの後工程を行いやすくなります。
拡張したテープは、インナーリングとアウターリングの間に挟んで固定します。これにより、テープの張力が戻り、チップ間隔が変化するのを抑えます。
製品によって外径、内径、厚み、材質、嵌合方法が異なるため、名称や対応ウェーハサイズだけで互換性を判断することはできません。
グリップリングの主な役割
1. チップ間隔を広げる
ダイシング直後のチップは、テープ上で互いに近い状態にあります。
エキスパンダーでテープを外周方向へ広げることにより、後工程に必要なチップ間隔を確保します。
適切な拡張量は、チップサイズ、テープ特性、装置条件によって異なります。
2. テープの拡張状態を保持する
テープを拡張した状態でインナーリングとアウターリングを嵌合させ、張力を維持します。
安定して保持するには、リングの寸法だけでなく、嵌合部の形状や使用するテープとの組み合わせも重要です。
3. 後工程で取り扱いやすくする
リング外周を保持して搬送や装置へのセットができるため、チップやテープ面へ直接触れる機会を減らしやすくなります。
また、一定のリング形状で管理することで、ピックアップ装置や検査装置への受け渡しもしやすくなります。
グリップリングの基本構造
代表的なグリップリングは、インナーリングとアウターリングで構成されます。
| 確認箇所 | 役割・確認内容 |
|---|---|
| インナーリング | テープ内側を支え、アウターリングと嵌合する |
| アウターリング | 外側からテープとインナーリングを固定する |
| 外径 | 装置や搬送ケースに収まるか確認する |
| 内径 | チップやウェーハの有効範囲を確保できるか確認する |
| 厚み・全高 | 装置の保持部やケースの収納部に適合するか確認する |
| 嵌合部 | テープを安定して固定できる形状か確認する |
| 切り欠き・穴 | 位置決めや装置側の機構に合うか確認する |
外径が近いリングでも、内径、厚み、嵌合部が異なれば、同じ装置や搬送ケースを使用できない場合があります。

グリップリングを使用する工程
一般的な使用の流れは次のとおりです。
- ウェーハをダイシングテープへ固定する
- ウェーハをダイシングする
- エキスパンダーでテープを拡張する
- チップ間隔を広げる
- グリップリングで拡張状態を固定する
- 検査やピックアップなどの後工程へ移す
実際の工程や設備構成は、生産ラインによって異なります。
そのため、グリップリングを選ぶ際は、リング単体だけでなく、使用するエキスパンダーや後工程装置も含めて確認します。
グリップリングとダイシングフレームの違い
グリップリングとダイシングフレームは、どちらもウェーハやテープの取り扱いに使われますが、主な役割が異なります。
| 比較項目 | グリップリング | ダイシングフレーム |
|---|---|---|
| 主な役割 | 拡張後のテープとチップ間隔を保持する | ダイシング工程でウェーハとテープを支持する |
| 主な構造 | インナーリングとアウターリングの二重構造など | 一体型の金属または樹脂フレームが中心 |
| テープの固定方法 | リングの間に挟み込み、嵌合して固定する | フレーム表面へダイシングテープを貼り付ける |
| 主な使用段階 | テープ拡張後からピックアップ工程まで | ウェーハマウントからダイシング工程を中心に使用 |
| 主な確認項目 | 外径、内径、厚み、嵌合構造、テープ条件 | 外形寸法、厚み、テープ貼付面、装置条件 |
一部の搬送ケースは両方に対応しますが、リングやフレームの寸法と保持位置を確認せずに共用することはできません。
グリップリング選定で確認したい5つのポイント
1. 対応ウェーハサイズ
最初に、対象となるウェーハ径を確認します。
ただし、「6インチ用」「8インチ用」といった表示だけでは、リングの実寸を判断できません。
同じウェーハサイズ向けでも、メーカーや型式によって外形寸法が異なる場合があります。
2. 外径・内径・厚み
装置や搬送ケースとの適合性を確認するには、次の寸法が必要です。
- アウターリングの最大外径
- インナーリングの内径
- リングの厚み
- 嵌合後の全高
- 突起や切り欠きを含む最大寸法
既存品を置き換える場合は、「8インチ用」といった情報だけでなく、現在使用しているリングの図面や実寸を基準に比較すると確認しやすくなります。
3. インナーリングとアウターリングの嵌合
内外リングが正しく組み合わさらなければ、テープを安定して保持できません。
外径が近い製品でも、嵌合部の角度、段差、寸法が異なれば組み合わせられない場合があります。
基本的には、メーカーが指定するインナーリングとアウターリングの組み合わせを使用します。
4. 使用するダイシングテープ
テープの厚みや伸び特性は、拡張後の状態やリングへの固定性に影響します。
現在使用しているテープがある場合は、品名や仕様を確認し、必要に応じて実際の工程条件で保持状態を評価します。
5. 使用装置との適合性
グリップリングは、エキスパンダーだけでなく、検査装置やピックアップ装置にも適合する必要があります。
確認したい項目は次のとおりです。
- 装置のメーカーと型式
- リングのセット方向
- 位置決め部
- クランプ位置
- 装置内のクリアランス
- 着脱方法
リングが装置内に収まるだけでなく、正しい位置で保持できることが重要です。
選定内容を整理するための早見表
| 確認したいこと | 準備する情報 |
|---|---|
| グリップリング本体を選ぶ | ウェーハサイズ、外径、内径、厚み、嵌合構造 |
| 装置で使用する | エキスパンダーと後工程装置のメーカー・型式 |
| 既存品を置き換える | 現在使用しているリングの型式、図面、実寸 |
| 搬送ケースを選ぶ | リング型式、最大外形、厚み、収納枚数 |
グリップリングの搬送・保管
グリップリングを工程間で搬送・保管する場合は、リング形状に対応したケースやマガジンを使用します。
選定時は、次の項目を確認してください。
- 対応するリング型式
- リングの外径と厚み
- 収納枚数
- ケース内部の保持位置
- テープやチップへの接触有無
- 蓋とのクリアランス
適合しないケースへ収納すると、リングが傾く、ケース内で動く、テープやチップへ接触するといった問題が起こる可能性があります。
YJステンレスでは、4・5インチ共用、6・7インチ共用、12インチ対応のグリップリング搬送ケースを展開しています。4・5インチ共用モデルはPET製で、ESD対策、カードスロット構造、クリーンルーム対応などが製品仕様として案内されています。仕様は製品ごとに異なるため、個別に確認してください。
グリップリング搬送ケースの詳しい選び方は、別の記事で解説します。
問い合わせ時に準備したい情報
グリップリングについて問い合わせる際は、次の情報があると仕様確認を進めやすくなります。
- 対応ウェーハサイズ
- 現在使用しているリングのメーカーと型式
- アウターリングの外径
- インナーリングの内径
- リングの厚みと嵌合後の全高
- 使用するダイシングテープ
- エキスパンダーのメーカーと型式
- 後工程装置のメーカーと型式
- 搬送・保管方法
- 必要数量
現在使用している製品がある場合は、図面、写真、実物サンプルも準備してください。
YJステンレスのグリップリング関連製品
YJステンレスでは、半導体後工程向けのウェーハ拡張リングと、グリップリング/エキスパンドリングの搬送・保管に使用する専用ケースを取り扱っています。
主な関連製品は次のとおりです。
ウェーハ拡張リング
グリップリング搬送ケース
リング本体と搬送ケースでは、確認する仕様が異なります。
リング本体を選ぶ場合は、外径、内径、厚み、嵌合構造、使用テープ、装置条件を確認します。
搬送ケースを選ぶ場合は、対象リングの型式、最大外形、厚み、収納枚数、ケース内部の保持位置を確認してください。
材質や静電気対策、収納方法などの仕様は製品によって異なるため、各製品の仕様表を個別に確認する必要があります。
ウェーハ拡張リングまたはグリップリング搬送ケースの選定については、リング型式、寸法、使用装置、使用目的、必要数量をご準備のうえ、YJステンレスまでお問い合わせください。

まとめ
半導体用グリップリングは、ダイシング後のテープを拡張し、チップ間隔を広げた状態で保持するためのリングです。
代表的なタイプは、インナーリングとアウターリングを組み合わせ、拡張したテープを挟み込んで固定します。
選定時は、次の点を確認してください。
- 対応ウェーハサイズ
- リングの外径・内径・厚み
- インナーリングとアウターリングの嵌合構造
- 使用するダイシングテープ
- エキスパンダーと後工程装置との適合性
- 搬送・保管方法
名称だけで選ばず、リング図面、テープ仕様、装置条件をあわせて確認することが重要です。
よくある質問
1. グリップリングは何のために使いますか?
ダイシング後のテープを拡張してチップ間隔を広げ、その状態を保持するために使用します。
これにより、後工程でのチップピックアップやハンドリングを行いやすくします。
2. グリップリングとウェーハ拡張リングは同じものですか?
近い意味で使われる場合があります。
YJステンレスでは、リング本体を「半導体ウェーハ拡張リング」、専用ケースを「グリップリング搬送ケース」などの名称で掲載しています。名称だけでなく、製品の構造と用途を確認してください。
3. 同じウェーハサイズなら同じグリップリングを使えますか?
必ずしも使用できません。
同じウェーハサイズ向けでも、外径、内径、厚み、嵌合構造、使用装置が異なる場合があります。
4. グリップリングとダイシングフレームは同じケースに収納できますか?
ケースの内部構造によって異なります。
両方に対応するケースもありますが、リングまたはフレームの外形、厚み、保持位置を確認する必要があります。